//
2026.10.17/3 min read#ai#direction

AIで作ったものをクライアントに出すときのルール——申告・確認・権利の3点

生成AIで作った文章や画像をクライアントに納品するとき、私は「使った箇所を申告する」「事実と類似を人が確認する」「権利の扱いを先に合意する」の3点を決めています。文化庁の資料や利用規約を手がかりに、実務での運用を整理します。

結論から書くと、AIで作ったものをクライアントに出すとき、私は申告・確認・権利の3点を自分のルールにしています。どこにAIを使ったかを伝える。事実と既存作品との似すぎを人が確認する。権利の扱いを着手前に合意する。どれも当たり前に見えますが、口約束で済ませると、納品後に「これAIですよね?」と聞かれた瞬間に説明が苦しくなります。

なお、ここに書くのは制作者としての運用で、法的な判断ではありません。契約や権利で迷う案件は、専門家に相談する前提で読んでください。

ルール1:使った箇所を「工程単位」で申告する

最初のルールは、AIを使ったことを隠さないことです。ただ「AIを使いました」とだけ書くと、全部AIが作ったように受け取られがちです。そこで私は、納品メモに工程単位で書いています。

工程 AIの使い方 人がやったこと
構成案 見出し案を3パターン出させた 1案を選び、順番を組み替えた
本文 下書きを生成 事実確認・全文の書き直し
メイン画像 使っていない 撮影素材を使用
背景テクスチャ 画像生成で作成 色調整・トリミング

この表を見せると、クライアント側も「どこを社内で確認すればいいか」が分かります。逆に、申告がないまま後から判明すると、内容に問題がなくても信頼のほうが傷みます。社内規程でAI利用を制限している会社もあるので、着手前の段階で「AIを使う予定の工程」を一度聞いておくのが私の順番です。

ルール2:事実と「似すぎ」は人が確認する

2つめは確認です。AIの出力は、もっともらしい間違いを含むことがあります。OpenAIの利用規約でも、出力を使ったり共有したりする前に、用途に照らして正確さと適切さを利用者が評価する責任がある、という趣旨が書かれています。納品物の責任は、道具ではなく出した側にある、と私は受け止めています。

私が確認しているのは次の2種類です。

  • 事実:数字・固有名詞・日付・仕様は、一次情報に当たって照合する。照合できないものは削る
  • 似すぎ:画像やコピーが、既存の作品・ロゴ・キャッチコピーに似ていないかを見る

「似すぎ」については、文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日、文化審議会著作権分科会法制度小委員会)が参考になります。概要資料では、AI生成物でも著作権侵害の判断には通常と同じく「類似性」と「依拠性」が必要だと整理されています。つまり、AIが出したから免除される、という扱いではないと読めます。実務では、特定の作家名や作品名をプロンプトに入れない、出てきたものを画像検索で一度当ててみる、といった小さな手順で対応しています。

ルール3:権利の扱いは着手前に合意する

3つめは権利です。ここが一番あいまいになりやすいところです。

利用規約上の扱いと、著作権法上の扱いは別の話です。たとえばOpenAIの規約では、適用法の範囲で出力の権利を利用者に帰属させる旨が書かれていますが、同時に、出力は唯一のものではなく他の利用者に似た出力が出ることもある、とも書かれています。一方、文化庁の概要資料では、簡単な指示で生成ボタンを押しただけのものは著作物に当たらない場合があり、著作物性は人の「創作的寄与」があるかで個別に判断されるとされています。人が加筆・修正した部分については著作物性が認められる、とも整理されています。

ここから私が引き出している運用は、次の2つです。

  1. 独占が必要な素材(ロゴ・キャラクターなど)にはAI生成物をそのまま使わない。最終形は人が描き起こす
  2. 契約書や発注書に「AI利用の範囲」と「納品物の権利の扱い」を一文入れる。曖昧なまま進めない

ロゴのように「他社と被らないこと」が価値の中心になるものは、権利の扱いが不安定な素材を土台にしないほうが、クライアントにとっても説明しやすいと考えています。

明日から試せる一手

次の納品から、納品メモの末尾に「AI利用箇所」の表を1つ足してみてください。工程・AIの使い方・人がやったことの3列だけで構いません。書いてみると、確認が抜けている工程や、権利の扱いを決めていない素材が自然に見えてきます。表が空欄になるなら、それも「今回は使っていません」という立派な申告です。