ChatGPT/Claudeを制作の「どの工程」に入れるか——要件定義・文言・検証
生成AIを制作フローに入れるとき、私は要件定義・文言・検証の3工程に絞っています。工程ごとに渡すもの・任せること・人が決めることを分け、手戻りを増やさない入れ方を整理します。
結論から書くと、私がChatGPTやClaudeを制作フローに入れる工程は、要件定義・文言・検証の3つに絞っています。デザインの最終判断や、クライアントへの約束ごとは入れません。理由は単純で、この3つは「たたき台があると人の判断が速くなる」工程で、逆に後者は「たたき台があっても判断の重さが変わらない」工程だからです。
ディレクター・デザイナー・エンジニアを一人で往復していると、AIを使う場面はいくらでも見つかります。ただ、どこにでも入れると、出力を確かめる手間が全工程に散らばって、結局遅くなりました。今は工程ごとに「渡すもの」「任せること」「人が決めること」を分けて考えています。
要件定義:抜け漏れを探す相手として使う
要件定義でAIに任せるのは、要件を決めることではなく、抜けている観点を挙げてもらうことです。
私がやっているのは、ヒアリングメモと「目的・対象・やらないこと」の1枚を貼り、「この要件で、公開後に問題になりそうな未決事項を挙げて」と頼むやり方です。フォームの通知先、多言語の有無、更新担当者、計測タグの管理者など、こちらが聞き忘れていた項目が並びます。それをそのまま次回の確認事項リストに転記します。
ここで効くのは、前提をどれだけ渡せるかです。Anthropicのプロンプトのベストプラクティスでは、Claudeを「優秀だが、あなたの職場の慣習や流れを知らない新人」として扱い、指示の背景や理由も伝えるとよいとされています。私の感覚でも、「BtoBの採用サイトで、更新は人事部が月1回、予算は前年並み」と一行足すだけで、挙がる観点の精度が変わります。
人が決めることは、挙がった項目のうちどれを今回の範囲に入れるかです。AIは範囲を広げる方向に強いので、絞るのはこちらの仕事だと割り切っています。
文言:構成と言い換えの量を出してもらう
文言の工程では、見出し案の量出しと、トーンの言い換えに使います。
- 1セクションにつき見出し案を10本出してもらい、私が2本に絞る
- 決まった本文を「専門用語を減らす版」「です・ます調を硬めにする版」に書き換えてもらう
- 文字数の制約(meta descriptionの文字数、ボタンの文字数)に合わせて短くしてもらう
一方で、事実を含む文はAIに書かせないようにしています。創業年、実績数、料金、所在地。こうした情報は私がクライアントの資料から書き、AIには言い回しだけを触らせます。もっともらしい数字が混ざると、校正の段階で見つけるのが難しいからです。
検証:チェックリストを読ませて「見る人」を増やす
検証では、AIをもう一人のレビュアーとして使います。
たとえば公開前に、ページの本文とリリース前チェックリストを渡して「このリストの観点で、本文に引っかかる箇所を挙げて」と頼みます。表記ゆれ、リンク文言が「こちら」だけになっている箇所、alt文が空の画像の指摘などは、人が疲れているときほど助かります。
ただし、AIが「問題なし」と返したことは、問題がない証拠にはしません。指摘が出たら人が確認する、出なかったら通常どおり人が見る。AIの検証は足し算であって、人の検証の置き換えではないというのが私の運用です。
入れない工程と、渡さない情報
逆に、私が入れていないのは次の2つです。
| 工程 | 入れない理由 |
|---|---|
| デザインの最終判断 | ブランドの文脈と、クライアントとの合意の積み重ねで決まるため |
| 見積もり・納期の約束 | 出た数字の根拠を、自分の言葉で説明できなくなるため |
もう一つ大事なのが、渡す情報の線引きです。個人向けのChatGPTでは会話がモデルの改善に使われる場合があり、設定で学習への利用をオフにできるとOpenAIのヘルプ記事で説明されています。法人向けプランについては、デフォルトで学習に使わないとOpenAIの法人向けデータのページで示されています。どのプランを使うにしても、私はクライアントの未公開情報や個人情報は渡さず、固有名詞を伏せた状態で使うことにしています。契約やクライアント側の規程が優先なので、案件の最初に「AIを使ってよい範囲」を確認するのが確実です。
明日から試せる一手
いま進めている案件のヒアリングメモを1つ選び、固有名詞を伏せたうえで「公開後に問題になりそうな未決事項を挙げて」とだけ頼んでみてください。挙がった項目のうち、自分のリストになかったものを数えます。1つでもあれば、要件定義の工程にAIを入れる価値がある、という判断材料になります。