Webサイト制作の標準WBSテンプレート——企画から公開後の運用まで
案件ごとにゼロからWBSを書くと、抜けるのは毎回「公開後」と「クライアント側の作業」です。私が使っている4区切り・約30行の標準テンプレートと、案件に合わせて削るときの考え方を書きます。
Webサイト制作のWBSは、案件ごとにゼロから書くより、標準テンプレートを持っておいて「削る」ほうが抜けが少ないと考えています。ゼロから書くと、書き手の頭にある作業しか並びません。私の場合、毎回抜けていたのは「公開後の作業」と「クライアント側の作業」でした。
以前の記事で分解の単位の決め方を書きました。今回はその単位で組んだ、私の標準テンプレートの中身を出します。
一段目は「企画・設計/制作/公開/運用」の4区切り
一段目は4つに切っています。工程で切っているように見えますが、狙いは契約と確認の区切りです。見積もりの分割、請求のタイミング、クライアントの承認がこの4つの境目で起きることが多いので、ここで切っておくと説明がしやすくなります。
制作の中身は、前回書いたとおり成果物(ページ・機能)を軸に割ります。一段目は区切り、二段目以降は成果物、という二層構造です。
WBSには、プロジェクトの範囲に含まれる作業を100%含め、範囲外の作業は含めないという「100%ルール」があるとされています(PMIの実践標準など)。テンプレートを持つのは、この「100%」に近づけるための手段だと思っています。
テンプレートの中身(抜粋)
実際には約30行ありますが、区切りごとに代表的な行を抜き出します。
| 区切り | 主な行 | 抜けやすさ |
|---|---|---|
| 企画・設計 | ヒアリング/要件定義書(目的・対象・やらないこと)/サイトマップ/ワイヤーフレーム/原稿・素材の手配依頼 | 素材の「手配依頼」が抜ける |
| 制作 | トップのカンプ/下層テンプレートのカンプ/各ページ実装/フォーム実装/CMS設定/原稿流し込み | 流し込みが実装に埋もれる |
| 公開 | 表示・動作の検証/アクセシビリティ確認/計測タグ設置/ドメイン・SSL・DNS切替/リダイレクト設定/戻し手順の用意 | 戻し手順とリダイレクト |
| 運用 | サイトマップ送信/公開後1週間の監視/更新マニュアル/保守範囲の合意 | ほぼ毎回抜ける |
アクセシビリティの確認は、W3Cの勧告であるWCAG 2.2を参照先として置いています。全項目を検査するかは案件で決めますが、「どこまで見るか」を決める行があること自体が大事です。
サイトマップ送信は、GoogleのドキュメントではSearch Consoleのサイトマップレポートやrobots.txtでの指定が案内されています。数分で終わる作業ですが、行にしておかないと誰もやりません。
「クライアント側の作業」も同じ表に書く
テンプレートで一番効いているのは、クライアント側の作業を同じWBSに行として書くことです。原稿の提出、写真の手配、確認と承認、ドメイン管理画面へのアクセス権の共有。これらを「担当:クライアント」として並べます。
別の表に分けると、進行管理の対象から外れます。そして遅れの原因は、私の経験ではこちら側に集まりがちでした。同じ表に載っていれば、週次のレビューで制作側と同じ目線で確認できます。書き方も制作側と揃えて、「〜を提出する」「〜を承認する」と完了の条件が1文で書ける形にしています。
削るときは「理由」を1行残す
テンプレートは削って使います。多言語対応がなければその行を消し、CMSを使わなければCMS設定を消します。ただ、消した行は「やらないこと」として先頭に移すようにしています。
「リダイレクト設定:旧サイトなしのため対象外」と書いてあれば、あとで旧ドメインが見つかったときに、それが範囲外の追加だと双方が分かります。黙って消した行は、「含まれていると思っていた」の火種になります。
明日から試せる一手
直近で公開した案件のWBSを開いて、「公開」と「運用」の区切りに何行あるかを数えてみてください。0〜2行なら、上の表の公開・運用の行を足すところから始めると、次の案件のテンプレートの芯になります。テンプレートは一度で完成させるものではなく、案件のたびに「今回抜けた行」を1行ずつ足していくものだと思っています。