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2026.10.05/4 min read#web-history#direction

Webサイトの歴史①——静的HTMLからCMSへ(1990年代〜2000年代)

1990年代〜2000年代のWebは「1ページ=1ファイル」の静的HTMLから始まり、更新のしやすさを求めてCMSへ移っていきました。公式の記録で年号を確かめながら、その流れが今の制作や運用の判断にどうつながっているかを書きます。

1990年代から2000年代のWebサイトの歴史は、「誰が更新するのか」という問いへの答えが変わっていった歴史だと私は捉えています。最初は作った人がHTMLファイルを直接書き換えていました。それが、デザインと文章を分ける仕組み、さらに書く人と作る人を分けるCMSへと進んでいきます。この流れを知っておくと、今の案件で「静的にするか、CMSを入れるか」を決めるときの理由を説明しやすくなります。

最初のWebサイトは「1ページ=1ファイル」だった

CERNのA short history of the Webによると、World Wide Webは1989年、CERNで働いていたTim Berners-Leeが考案したものです。もともとは、世界中の大学や研究機関の科学者が情報を共有するための仕組みでした。

世界で最初のWebサイトは info.cern.ch で、Berners-LeeのNeXTコンピューター上で動いていたと、CERNのWhere the web was bornに書かれています。その内容はWWWプロジェクト自体の紹介でした。

この時代のWebサイトは、HTMLファイルを1枚ずつ書いてサーバーに置くものです。ページが10枚あれば、ファイルも10個。ヘッダーのメニューを1項目増やすだけでも、全ファイルを開いて同じ修正を繰り返す必要がありました。私が最初に触ったサイトもこの形で、修正漏れのページを後から見つけた経験が何度もあります。

もう1つ大きな出来事として、CERNは1993年4月30日にWWWのソフトウェアをパブリックドメインにしています(30 years of a free and open Web)。誰でも自由に使って作れる状態になったことが、Webが広がった大きな要因の1つとされています。

CSSで「見た目」と「中身」が分かれた

次の転換点は、見た目の指定をHTMLから切り離せるようになったことです。W3Cは1996年12月17日にCascading Style Sheets, level 1(CSS1)を勧告として公開しています。

CSSの考え方は、色や文字の大きさを1つのファイルにまとめて、全ページから読み込むというものです。これで「デザインを変えるたびに全HTMLを直す」作業は減りました。ただし、ブラウザごとの対応状況には差があったため、実務ではしばらくの間、表組みのタグでレイアウトを作る方法も併用されていたと記憶しています。

ディレクションの目線でいうと、ここで初めて「デザインの変更」と「文章の変更」を別の作業として見積もれるようになりました。今のデザインシステムやCSS変数の設計も、この分離の延長にあると私は考えています。

CMSで「書く人」と「作る人」が分かれた

それでも、文章を更新するにはHTMLを触る必要がありました。お知らせを1本追加するたびに制作者へ依頼が来る、という運用は、依頼する側にも受ける側にも負担です。

そこで広がったのが、管理画面から文章を入力するとページが組み上がるCMS(コンテンツ管理システム)です。代表例のWordPressは、公式のHistoryによると、2003年5月27日にバージョン0.70が最初に公開されています。

CMSの登場で、役割は次のように分かれました。

役割 静的HTMLの時代 CMS導入後
文章の更新 制作者がHTMLを編集 担当者が管理画面から入力
デザインの変更 全ファイルを修正 テンプレートを修正
ページの追加 ファイルを複製して編集 管理画面で新規作成

更新が速くなった一方で、サーバーやデータベースの保守、プラグインの更新といった「運用の仕事」が新しく生まれました。CMSは手間を消したのではなく、手間の置き場所を変えたのだと私は理解しています。

今の判断にどう持ち帰るか

この歴史を踏まえると、静的HTMLとCMSのどちらを選ぶかは、技術の新旧ではなく更新の頻度と更新する人で決まると考えています。私が要件定義で確認しているのは次の3点です。

  • 更新は月に何回あるか(ほぼ無いなら静的でも困りにくい)
  • 更新するのは誰か(HTMLを触れない人なら管理画面が要る)
  • 保守を誰が担うか(CMSの更新作業を引き受ける人がいるか)

この3点が言葉になっていれば、「なぜCMSを入れるのか」「なぜ入れないのか」をクライアントに説明しやすくなります。

明日から試せる一手

いま担当しているサイトについて、「直近3か月で何回、誰が、どのページを更新したか」を書き出してみてください。更新がほとんど無ければ構成をシンプルにできるかもしれませんし、制作者への依頼が多ければCMSの導入や見直しを提案する材料になります。歴史の流れを「誰が更新するか」で見直すと、目の前のサイトの課題も同じ問いで整理できます。