中小企業サイトで写真が用意できないときの設計——素材より先に決めること
撮影予算がない、手元の写真が暗い、人を出せない。中小企業サイトでよくあるこの状況で、私はフリー素材を探す前に「写真に何を担わせるか」を決め直します。文字・図・実物の小さな写真で組み立てる手順を書きます。
結論から書くと、写真が用意できない案件では、フリー素材を探し始める前に「このページで写真に何を担わせたかったのか」を書き出すようにしています。役割が分かれば、その多くは文字・図・数字、あるいはスマホで撮れる小さな実物写真で置き換えられます。大きなイメージ写真を差し替えるだけでは、問題が見えにくくなるだけのことが多いと感じています。
写真は「見られる写真」と「飛ばされる写真」に分かれる
Nielsen Norman Group の Photos as Web Content(Jakob Nielsen、2010年)では、アイトラッキング調査をもとに、実在の社員のような情報を持つ写真はよく見られる一方、雰囲気づくりのための装飾的な写真は無視されやすい、と整理されています。
私の実感とも一致します。中小企業のサイトで問い合わせにつながっていたのは、トップの大きな「握手する手」ではなく、代表の顔や作業場の様子、納品物の写真でした。逆に言えば、写真が用意できない状況で困るのは「雰囲気」ではなく、実在していることの証明が薄くなる点です。そこを別の手段で補えるかどうかが設計の分かれ目になります。
写真の役割を4つに分けて置き換える
私は写真を置く予定だった場所ごとに、役割を次の4つに分けて考えます。
| 役割 | 写真がない場合の置き換え |
|---|---|
| 実在の証明(誰が・どこで) | 代表のひとこと+署名、所在地の地図、創業年や拠点数などの事実 |
| 仕事内容の説明 | 工程を3〜5ステップに分けた図、Before/Afterの文章 |
| 成果の提示 | 導入事例を数字と引用で書く、納品物のスマホ写真を小さく |
| 雰囲気・ブランド | 書体と余白、1〜2色のキーカラー、図形やパターン |
このうち最後の「雰囲気」だけが、写真を使わなくても比較的つくりやすい部分です。タイポグラフィと色を先に決めておけば、写真がなくても「どこの会社か」を見分けられる程度の個性は出せます。
実物写真は「小さく・揃えて」使う
「プロに撮ってもらえないなら写真はゼロ」にする必要はありません。担当者がスマホで撮った写真でも、使い方次第で十分に役に立ちます。私がお願いしているのは次の3点です。
- 撮る対象を絞る:人物より、手元・道具・納品物・作業場の一角。顔出しが難しい会社でも撮りやすいものです。
- 明るさと向きを揃える:窓際の自然光で、同じ高さ・同じ向きから撮ってもらう。枚数より揃い方のほうが印象を左右します。
- 表示サイズを小さくする:画面いっぱいのメインビジュアルではなく、カードの一部や本文中の添え物として使う。画質の粗さが目立ちにくくなります。
トリミングの比率を1つに統一し、色味だけ軽く補正すれば、それなりに「揃ったサイト」に見えます。
フリー素材を使うときの線引き
それでも素材写真を使う場面はあります。そのときは、ライセンスを案件ごとに確認します。たとえば Unsplash License は、執筆時点では商用利用が可能でクレジット表記は任意、ただし大きな加工なしでの販売や、画像を集めて類似サービスをつくることは認められていない、という内容です。ライセンスは変わることがあるので、採用時の条件を画面キャプチャで残しておくようにしています。
使い方としては、素材写真に「実在の証明」を担わせないことを決めています。社員紹介や事例のように、実在の人や場所に見える位置には置きません。背景や区切りなど、装飾として扱う場所に限定します。
装飾として置いた画像は、アクセシビリティの面でも扱いを分けます。W3C の Decorative Images では、装飾的な画像には空の alt="" を指定して支援技術に無視させる方法が示されています。装飾か情報かの判断は作り手にしかできない、とも書かれているので、私はワイヤーの段階で画像ごとに「装飾/情報」をメモしておきます。
明日から試せる一手
今つくっている(または運用している)サイトのワイヤーを開いて、写真枠ごとに「実在の証明・仕事内容・成果・雰囲気」のどれを担わせるつもりだったかを1語ずつ書き込んでみてください。「雰囲気」以外の枠は、写真がなくても文字や図で埋められるかを検討する。これだけで、撮影をお願いすべき写真の枚数と中身がかなり絞れるはずです。