クリティカルパスを口頭で説明できるか——依存関係の見つけ方
クリティカルパスは図の中で色を塗るものではなく、口で言えて初めて使えるものだと考えています。依存関係の聞き出し方、3文で言えるかの確認、経路ごとに違う余裕の扱いを書きます。
自分の担当している案件のクリティカルパスを、資料を見ずに3文くらいで言えるか。私はこれを進行管理の健康診断として使っています。ツールで自動計算させれば経路には色が付きますが、色が付いた線を口で説明できないとき、たいてい依存関係の設定のほうが実態とずれています。
クリティカルパスは「いちばん長い経路」
クリティカルパスは、依存関係でつながった作業のうちもっとも長い連なりを指します。Wikipedia の critical path method では「依存する作業のもっとも長い連なりを特定し、最初から最後までにかかる時間を測ることで決まる」と説明されています。長いほうが基準になるのは、短い経路が先に終わっても、長い経路が終わるまでプロジェクトは終わらないからです。
ここから、実務で効く性質がひとつ出てきます。標準的なケースでは、クリティカルパス上の作業は遅れをそのままプロジェクト全体の遅れに変換します。逆に言えば、それ以外の作業は多少遅れても全体の日付は動きません。どこを毎日見て、どこを週1で見るかを決められる、というのがこの考え方の実利です。
依存関係は「工程」ではなく「受け渡し」から聞く
依存を洗い出すとき、私は工程名を並べることから始めません。工程名で並べると、企画→設計→デザイン→実装→検証、という教科書どおりの一直線ができてしまい、実際には並行できるものまで直列に見えてしまうからです。
代わりに聞くのは、受け渡しの中身です。
- この作業を始めるのに、手元に何が揃っている必要があるか
- それは誰が作るのか。社内か、クライアント側か
- 途中まででも渡せるのか。全部揃わないと始められないのか
Web制作だと、この質問で「原稿」が浮かび上がることが多いです。デザインは仮テキストで進められても、実装後の文字量調整と検証は原稿が確定しないと閉じられない。すると原稿の締切が、デザインの締切より後ろにあるのに全体を止める、という形が見えてきます。工程表の上では真ん中あたりにある作業が、実はいちばん怖い、というのはよくあることです。
3文で言えなければ、分解が粗い
洗い出したら、声に出して確認します。「原稿が確定しないと文字量の調整に入れない。調整が終わらないと検証が始められない。検証が終わらないと公開できない」——このくらいの粒度で、詰まらずに最後まで言えるかどうか。
言えないときの原因は、だいたい次のどれかでした。
| 症状 | たいていの原因 |
|---|---|
| 途中で「あとは並行で」と言ってしまう | 並行に見えるだけで、共通の前提物がある |
| 作業名が抽象的で説明が伸びる | 分解の単位が大きすぎる |
| 担当者名が出てこない | 依存先が社外で、こちらの管理外になっている |
3文で言えるということは、少なくとも自分が経路を理解しているということです。理解できていれば、クライアントとの打ち合わせで「今週この判断が遅れると、公開日が動きます」と、その場で説明できます。
余裕は経路ごとに違う
クリティカルパスから外れた作業には余裕がありますが、その余裕は2種類あります。プロジェクト管理の用語では、全体の完了日を遅らせずに遅らせられる量をトータルフロート、次の作業の開始を遅らせずに済む量をフリーフロートと呼び、フリーフロートがトータルフロートを超えることはない、と整理されています(Project Management Academy の解説)。
現場の言葉に直すと、「全体の締切にはまだ余裕があるが、次の担当者を待たせる余裕はもうない」という状態があり得る、ということです。ここを混ぜると、「まだ大丈夫」と言った翌週に他チームから催促が来ます。余裕を伝えるときは、全体に対する余裕なのか、次の人に対する余裕なのかを分けて言うようにしています。
明日から試せる一手
進行中の案件をひとつ選んで、資料を閉じた状態で、公開日から逆にたどって声に出してみてください。「公開の前は検証、その前は◯◯」と3〜4本つなげてみて、どこかで詰まったら、そこが依存の見えていない箇所です。詰まった箇所だけ、担当者に「これを始めるには何が揃っていればいいですか」と聞き直す。工程表を引き直すのはそのあとで間に合います。